EUでは、水力、風力、バイオマス、太陽光など再生産可能なエネルギー利用の促進を積極的にすすめているが、この中でもバイオマスのエネルギー利用がもっとも主要な位置を占めるようになってきている。このバイオマス資源の素材の中心も、麦わらなどの農産廃物から木材に移りつつある。また、バイオマスを中心とした再生産可能なエネルギーで約1億トンの二酸化炭素削減を目指しており二酸化炭素削減のための研究開発予算でもトップに立っているという。
スウェーデンを例に取ると、政府のエネルギー政策として再生可能なエネルギー源の効率的な利用にカを入れており、木質バイオマス燃料による熱電併給システム、特に地域暖房への熱供給システムの整備を積極的に推進している。木質バイオマス利用の場合はエネルギー税や二酸化炭素税が免除されており、スウェーデンの一次エネルギー生産の約18パーセントが木質バイオマスによるものである。スウェーデンには、木材をチップにして、それを燃やす蒸気ボイラーで地域暖房や発電をしている施設が30力所以上ある。
またアメリカ合衆国では、燃料用木材や製材工場などから出た廃材などを燃料として使用しているバイオマス発電所が550近く稼動しており、全体で約7000メガワットの発電能力がある。それぞれの発電能力は小さく、平均出力は20メガワットであるが、これらの発電所は、アメリカ合衆国の全電力の1パーセント(産業用電力では8パーセント)をまかなっている。2010年までには約2倍にする計画であるという。
現在の日本での木質バイオマスの利用は、製材所が製材時の副産物を用いて発電を行っている事例が数力所あるにすぎない。木質バイオマスの使用量は、先進国各国と比較しても、一桁も二桁もちがうのが現状である。この現状には、各国と比軟して木材搬出コストの違いや税制の未整備、電気の電力会社の需要独占など様々な要因があげられる。しかし、地球温暖化抑制策としての二酸化炭素税の導入や地域熱供給事業の促進は必至であるといわれており、木質バイオマスのエネルギー利用は、今後さらに検討されていく必要がある。