バイオマスという言葉自体が多義的で捕まえにくいところがある。さまざまな定義があるのは当然だろう。その中で『バイオマスエネルギー(省エネルギーセンター刊)』の著者
本田淳祐氏は「太陽エネルギーを貯えた様々な生物体の総称」としているが、この定義はバイオマスの本質をついていると思う。葉緑素を持つ植物は、燦々と降り注ぐ太陽光の中で、大気中の二酸化炭素と、根から吸い上げた水を使って光合成を行い、糖類、セルロース、リグニンなどの有機物を生産する。生態学で言うバイオマスは「特定の群落に、ある時点で存在する有機物の総量(乾物量で表示)」を指していて、「現存量」とか「生物生体量」といった日本語があてられる。
ところで、バイオマスに太陽エネルギーが貯め込まれている以上、これを燃焼させれば放熱が起きる。つまり光合成で作られた、炭素の多い有機物が、燃焼により酸化・分解されて多量のエネルギーを放出するのである。その限りでバイオマスとは「エネルギー生産に使われる生物体」であるという定義も可能であろう。最近出版されたアメリカの林業用語辞典は、バイオマスを「樹木の全部またはその一部を通常はチップにして得られる木質産物」と規定し、「エネルギー生産に向けられる枝条、梢端、市場価値の無い幹などを含む」としている。林業関係者が木質バイオマスのエネルギー利用というときには、この定義が一番ピッタリしている。
林地残材のほか、製材工場などの残廃材や産業廃棄物とされる建築端材・解体材なども木質バイオマスに含まれよう。他方、古紙のように、木材以外の物質を加えて高度に加工したものは含まない。ただ、パルプ工場の廃液はバイオマスとして取り扱われることが多いようである。
燃料としてのバイオマスについては、化石燃料と対比する意味で「生きた燃料
biofuel」と呼ばれることがある。「生物燃料」といってもいい。石油や石炭は、太古の昔に生育していた樹木や藻類が地中に埋もれて化石化したものだ。また、現在たっている樹木を切り倒して同じような条件のもとに何百万年も放置すれば化石燃料になるだろう。両者がともに燃料として有用なのは、太古または数十年前に太陽が放射したエネルギーをしっかり貯め込んでいるからである。